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「何を考えながら描いてるの?」を言語化したら知らない自分がいた。「本好きの下剋上」のイラストメイキング動画に解説字幕をつけた話。

今回はこの動画についてのお話です。


どんなことにも最低100個はノウハウがある。」と思って生きています。

例えば仕事
たこ焼き屋さんなら「材料の配合」、「道具の使い方」、「回し始めるタイミング」。「店舗のレイアウト」や「お客さんへの声かけの方法」にも独自のノウハウが詰まってそうですね。

例えば通勤通学の電車
「乗る車両の選択」、「立ったまま片手でスマホを操作するテクニック」、「途中で降りそうな人の特徴と、代わりに自分が座る技」、「ホームから改札へのライン取り」など。いくらでも出ます。

ゲーム、勉強、家事、育児。
セブンルールどころか、経験を絞り出せばそれぞれ100個くらいは出るんじゃないでしょうか。

じゃあ、ひるがえって僕はどうでしょう?
漫画やイラストを描く仕事です。

「…あまり考えたことがなかったな。」

ええ…、いや、ちょっと待って。ノウハウはあるはずなんです。
「マンガでわかる漫画家入門!」みたいなのは小学生の頃から読んでましたし、進学して絵に関する専門教育も受けてはいます。会社員時代も先輩からテクニックを学びましたし、独立した今も研究や資料集めを怠ったことはありません。

実際、制作中に無数の計算が頭の中でガンガン回っているのは自分でも知っているんです。
でもよく考えてみると、その過程は瞬間ごとに光っては消えていくものなので、いざ終わってみると「できた。(゚∀゚)」くらいにしか思ってないんですよね。

読者さんからの質問や、たまにあるインタビューで「どうやって描いたんですか?」と聞かれても、「え…。がんばってかきました。(^o^)」なんて頭のわるそうな答えしか浮かんできませんでした。

あれ?自分て思ってたよりバカなのでは…。

そんな自分を客観的に見るためにも「いつかは仕事を言語化してみたいな…」とは思っていたんですが、それすらなんとなく忘れて過ごしてました。


そんな折、ひょんなことから過去のメイキング動画を公開する作業が始まりました。↓です。

最初は撮ったのをそのまま流してただけですが、欲は出てくるもので、少しでも楽しんでもらえるようにと字幕で解説を始めてみたんですよね。

工程ごとに思い出しながらコメントをつけて行くんですが、不思議なもので書きながらだと色々思い出してくるんですね。
視線の誘導で三角構図を作ったりとか、明暗の差で重なりの前後感を出したりとか。
「おー、けっこう言語化できてるじゃん!わーいわーい」

ちなみに今回のイラストについては原作の香月美夜さんからも感想をもらえました。
イラストを楽しむことに加えて、動画によってさらにプラス1で喜んでもらえるのは最高ですね。
「本好きの下剋上」ファンの方にも同じように届いていると嬉しいなあ。


ノウハウ以外ではしょうもないこともたくさん考えてるみたいだったんですが、コメントをつけていくうちに、ふと見えてくるものがあることに気づきました。

「あ、この人、ずーっと楽しそうに絵を描いてるな」、と。

自分なのに。

絵を描くことってめんどくさいんです。基本めんどくさい。
始める前は「やりたくない」とすら思ってます。めんどうだもん。
寝っ転がって妄想しただけで神絵が完成しててほしいし、なんならすでに完成してる絵が自分の作品だったらどんなに楽ちんなことか。

自分自身で選んだ仕事とはいえ「よくそんなめんどうなことを何千枚も続けてるな…」なんて自虐的に思ってたフシすらあったんですが、動画を見ているうちに「なんだ、わりと天職に近いものを見つけてるのか」なんて考えが改まってきたわけです。

ちょっと見直しました。やるじゃん、自分


『過去の自分の動画にコメントをつけてみる。』


これも、「知らない自分に会いに行く方法」の100個あるノウハウの一つなのかもしれませんね。



よろしければ単行本を買って、イラストを手にとってもらえると嬉しいです!

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平尾リョウ Hirao Re-YOH - note
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